INTERVIEW
インタビュー


本日は、FitSell代表の山岡さんにお話を伺いたいと思います。
山岡さん自身も2020年にM&Aを経験しています。
- ・将来的にM&Aを考えている。
- ・人生観、価値観の変化により新しい事業に転換したい
- ・規模が小さくて大手M&Aへの依頼を断られた
- ・自社の規模や業績でM&Aできるのか悩んでいる
など、フィットネス業界で悩んでいる方に、ぜひ読んで頂きたい内容です。
ぜひ、最後までお楽しみください!

山岡さんのプロフィール、これまでの経緯を教えてください。
創業前は、スイミングスクール、ジム、テニススクールなどがある、総合スポーツクラブの事業責任者でした。2002 年頃に、ピラティスというものがアメリカで流行しているということを知り、総合スポーツクラブの中で取り入れたことがピラティスとの出会いでした。
総合スポーツクラブで出来るピラティスは「マットピラティス」と言って、ピラティスの中のほんの一部しかお伝えすることが出来ず、集客に悩む時期もありました。
ピラティスというのは本来、いろんな器具を使って行うのがピラティスの本質であって、総合スポーツクラブでは、ある一部分しか伝えることが出来ずに、お客様の満足度も高くなることなく、定着しなかったという背景がありました。

その現実を見た時に、ピラティスという専門性を高めることで特化され、お客様にも喜んで頂けるのではないかと考えました。
当時、私はクラブビジネスの勉強のためにサンフランシスコに行っていました。サンフランシスコには本当にピラティスやヨガの専門店が多く、どの専門店もお客様でいっぱい。その状況を見ていたので、きっと日本でもこの波が来るはずだと確信していました。
創業からこれまでのお話を聞かせてください。
2008年、当時39歳の時にピラティス・ヨガの専門店として会社を創業しました。
当時、ピラティス・ヨガ専門店と呼ばれるサロンは福岡には1店舗。全国展開を行っている会社も私たち以外に2社しかない状態。いわゆる、業界の最先端を走っている企業でした。
経営に携わる12年間の中で直営店、FC店合わせて13店舗を展開しました。
日本初プログラムを取り入れたりして、目新しいことにも積極的にチャレンジし、メディア等に多く取り上げられることもありました。
また、ピラティス・ヨガ専門店として全国展開する企業は少なく、また地方創業の企業も珍しかったので、講演会に呼ばれ、雑誌に掲載されることも多かったと思います。

去年、新型コロナウィルスの流行という状況で、ピラティス・ヨガ専門店の店舗、インストラクターを育成するためのスクール等も運営していましたが全て売却し、現在に至ります。
会社売却をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
会社の売却を、新型コロナウィルスの流行の真っ最中だった2020年5月に行ったこともあり、周りからはコロナの時期の前から動いてすごい!と言われることもあるのですが、実はその前から売却に向けた意識が芽生えていました。
コロナがあってもなくても、私は売却という選択肢を取っていたと思いますが、大きく2つのきっかけがありました。
ひとつは、2019年の秋。
まだ、コロナがはじまる前、妻の誕生日に「これからの人生でどんなことをお互いにやりたいか?」ということを箇条書きして、お互いに見せ合いながら、これからの人生について話す時間がありました。

その紙をお互いに見た時に「今のこのままの状態だと、ここに書いている内容の 2/3 は実現できないままに終わってしまうな...。このままで本当にいいのか?」と、人生に対する問題提起が生まれたのが、きっかけのひとつでした。
もうひとつは、2018年くらいまでは、前年比超え右肩上がりで会社が成⻑していました。ですが、この2年業界は伸びているはずなのに、会社の成⻑が鈍化している状態へ... 100名くらい女性スタッフがいましたが、一定の離職率がある業界でもありました。
理念に従業員の幸せを追求すると書いていましたが、現実との乖離を感じはじめたのもこの時期でした。営業会議をしていると、人間関係の悩みで現場が苦しんでいたり、そこが集客の悩みのきっかけになっていたりして。
俺がやりたかったことはこれだったのか?と問うようになりました。
上場を目指してアクセルを踏んでいる中で、現場はブレーキがかかった状況。この違和感とギャップを感じる中で、もしかすると会社というのは、生みの親と、育ての親は違ってもいいのかもしれないと思うようになりました。
ちなみにお二人の紙には何が書かれていたのでしょうか?
いろんな国を見て回りたいというのは、二人に共通していました。
また、自分の人生の時間の使い方を考えた時に、活かせることがあるんじゃないかと思いました。いろんな世界で、住んで、そこでビジネスをしてみたと考えていました。
物質的なことでいくと、スポーツは文化だと思っているので、地域でスポーツチームを持つというのも考えています。ソフトバンクは持てないけれど(笑)サッカーチームなどを持てるいいなとか!思っていますね。
子供たちと関わっていると、スポーツから学ぶことはたくさんありますし、そのためにはもっと経済的な力を身につけていきたいと考えています。
SDGsだからということではなく、以前より、フィリピンの貧困層の方にずっと支援をしていました。僕たちができること、助けることができることで、これから先も継続的な支援を行っていきたいと思っています。

日本にも貧困の子たちは確かに存在していて、「日本にも支援をしたらどうだ?」と言われることもありますが、1,000円を誰かに渡したとき、日本の価値だと 1,000円にしかなりませんが、マニラだと6倍くらいの価値が生まれます。このレバレッジをしっかり効かしてサポートができることも大切だと考え、海外の貧困支援へのサポートを行っています。
この支援をさらに広げていきたいと考えた時に、場所に縛られ、動きが取りづらいビジネスを行っていると、このような活動はなかなか出来ないと思うんです。
自分の人生をリスタートして、前に進みたいと思うようになりました。
M&Aを決断し、乗り越えていくべきポイントは?
M&A に対して否定的な人は今も多いと思います。となると、M&A をすることによって生じる、世間からの見え方に関して、自分自身が「自信」を持って、その事象を捉えることができるかは大きなポイントになると思います。
方法論のお話でいくと、デューデリ(※)を行う必要があり、組織編成等の取り決めなどやることはとても多いです。会社をどう評価してもらい、交渉するのかも大切です。
ですが、それ以上に心の部分が大切になります。
中小企業の場合は、会社と代表がイコールになっていることが多く、オーナー兼チーフトレーナーという方も多くいらっしゃいます。

すると会社を売却することで、会員さんから「代表、辞めちゃったんだね!」と言われるのではないか?と、会員さんとの距離が近いからこそ、見え方や評価が気になる。
自分の価値観、自分の物事の捉え方が大きく左右しますし、M&Aをするんだという強い覚悟が必要になると思います。その上で、自分が何を大切にしているのかを見直し、これからの人生を生きていくためのひとつの手段として、また、みんなを幸せにするためのひとつの方法として選択するかどうか。 同時に、自分のエゴやプライドと対峙する時間になる気がします 。
※デューデリ:(Due:当然の、正当な/Diligence:精励、努力)
M&Aを行う際に、買収対象となる企業の経営環境や事業内容を把握したり、正確な企業経営の実態を把握などを行う企業の精密検査のこと。
Fitsellへ相談をしようか迷っている方へメッセージをお願いします。
売却するというのは、あくまで結果論です。
売却に至るまでのプロセスの中で、資本提携や業務提携という道もあります。
私の場合は事業売却、M&Aという形になりましたが、本当にそれは人それぞれです。
現状を聞き、アドバイスをしていく中で、「え!私の会社でも資本提携ってできるんですか?」と驚かれることがありますが、実際そのようなケースも少なくありません。
売却前提のお話だと少し大きく感じるかもしれませんが、今ある課題を洗い出すことによって、自分の想定していない解決策や選択肢が見つかることもあるので、まずは経営相談するような気持ちで問い合わせすることをオススメしたいです。 。

相談して頂ければ、売却するという選択が出てくるかもしれないし、売却せずとも業務提携・資本提携という別の道も見えてくるかもしれない。
取り組むプロセスそのものに価値があると思います
今日はお話をありがとうございました
こちらこそありがとうございました。
自分の掲げていた志が、時間の経過とともに、価値観ごと変わっていくことを体験しました。
ひとりの人生であれば、それで良いのですが、社員がいることでその価値観が変わることに色々な人を巻き込んでしまう。これは本当に良いことなのか?とは何度も考えました。
M&Aをすることにより、人生の方向性を変えられるというのは本当に大きかったです。
これからも自分の人生を生きる人が、ひとりでも増えていくことを願い、私自身の経験を活かしながら、サポートをしていきたいと思います。